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釧路地方裁判所 昭和51年(行ウ)3号 判決

原告1

芳賀勝男

外(2〜488)四八七名

右原告ら訴訟代理人

佐藤文彦

川村俊紀

斉藤了一

後藤徹

佐藤義雄

鈴木紀男

鎌形寛之

武子暠文

藤原修身

生井重男

高橋政雄

被告

帯広市

右代表者市長

田本憲吾

右訴訟代理人

太田三夫

橘精三

山根喬

右指定代理人

足沢欣弥

外六名

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1被告は、原告らに対し、それぞれ別紙請求金目録記載の各金員を支払え。

2訴訟費用は被告の負担とする。

3仮執行宣言

二請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  当事者

(一) 別紙原告目録番号1ないし87記載の原告らは、帯広市水道部勤務の職員で、地方公営企業労働関係法(以下「地公労法」という。)が適用される一般職に属する地方公務員(以下「企業職員」という。)であり、同目録番号88ないし488記載の原告らは、帯広市又は帯広市教育委員会勤務の職員で、地方公務員法(以下「地公法」という。)五七条、地公労法附則四項により、地公労法及び地方公営企業法(以下「地公企法」という。)三七条から三九条までの規定が準用される単純な労務に雇用される一般職に属する地方公務員(以下「単労」という。)であり、いずれも全日本自治団体労働組合帯広市職員労働組合(以下「市職労」という。)に所属する者である。

(二) 被告は、地方自治法(以下「地自法」という。)一条の二第二項による普通地方公共団体であつて、原告らの使用者である。

2  協定の成立と仲裁裁定

(一) 市職労は、昭和五〇年一二月一五日、被告代表者である帯広市長(以下「市長」という。)との間において、同年の年末手当を組合員一人当たり給与月額の3.05か月プラス一七、五〇〇円とし、同月中に支給することを内容とする協定(以下「本件協定」という。)を締結し、右内容を書面に作成して両当事者が署名押印した。

(二) 市長は、同月一八日、帯広市職員給与条例二八条により一二月支給の期末手当として規定されている職員一人当たり給与月額の2.7か月分(この分については、原告らを含む組合員に対し、同月一〇日支給済み)と本件協定との差額である給与月額の0.35か月プラス一七、五〇〇円分(以下「本件差額分」という。)を同条例三三条、同条例施行規則二〇条により調整手当として支給するため、帯広市議会(以下「市議会」という。)に対し、補正予算案を提出した。

(三) しかし、右補正予算案の付議を受けた市議会予算特別委員会は、同月二三日、審議の結果原案を職員一人当たり給与月額の0.075か月プラス二、五〇〇円分減額する修正案を議決し、右同日、市議会本会議も右減額修正案を承認議決した。

(四) その結果、市長は、原告らを含む組合員に対し、調整手当として一人当たり給与月額の0.275か月プラス一五、〇〇〇円分を支給したのみで、市議会によつて減額された給与月額の0.075か月プラス二、五〇〇円分(以下「本件減額分」という。なお、これに相当する原告ら各自の金額並びにこの各金額を原告らがそれぞれ適用を受ける被告の一般会計及び特別会計(以下「各会計」という。)別に合計した金額は、別紙請求金目録記載のとおりである。)を支給しない。

(五) そのため、市職労は、同月二四日、昭和五一年一月八日及び同月一六日の三回にわたり、市長との間で、本件協定の完全履行を要求して団体交渉を行つたが、双方の主張が平行線に終つたため、同月二二日、原告らについて北海道地方労働委員会(以下「地労委」という。)に対し、あつせん申請をしたところ、地労委は、同年二月一一日、あつせんを打ち切り、その際労使双方に対して本件協定を尊重し自主交渉で解決すべき旨の勧告書を交付した。

(六) そこで市職労は、同月二六日、同年三月二六日及び四月二日の三回にわたり、市長との間で、右勧告の趣旨を尊重して市議会に対し本件減額分を支給するための補正予算案を再提出するよう要求して団体交渉を行つたが、市長がこれを拒否したため、同月三日原告らに対する本件協定の完全履行を求め、地労委に対し、仲裁申請をしたところ、地労委争議仲裁委員会は、同年五月七日、原告らについて別紙仲裁裁定目録記載の各仲裁裁定(以下「本件各裁定」という。)をなし、右各裁定書は、同月一〇日ころ、被告に交付された。

(七) 市長は、同年六月一七日、市議会に対し、本件各裁定の承認を求める議案及び本件各裁定が命じた本件減額分の支給に必要な補正予算案を提出したが、その付議を受けた市議会議案等審査特別委員会において、同月二三日、これらがいずれも否決され、市議会本会議においても、同月二六日、右同様の議決がなされたため、原告らに対し、本件減額分を支給しない。

3  本件協定に基づく未払賃金請求

本件協定は、地公労法の適用(準用を含む。以下同じ。)を受ける原告らにとつては、労働協約としての規範的効力を有するから、使用者である被告は、右協定の内容につき法律上の拘束を受けるというべきである。したがつて、原告らは、被告に対し、本件協定に基づき、それぞれ本件減額分に相当する未払賃金請求権を有するので、その支払を求める。

4  本件各裁定に基づく未払賃金請求

仮に本件協定に基づく未払賃金請求権がないとしても、本件各裁定は、労働協約より一層強く当事者を拘束する効力を有するものであるから、原告らは、被告に対し、本件各裁定に基づき、それぞれ本件減額分に相当する未払賃金請求権を有する。よつて、原告らは、被告に対し、右未払賃金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1請求原因1の各事実は認める。

2同2の各事実は認める。ただし、原告らに対する調整手当支給の根拠規定は、企業職員については帯広市企業職員の給与の種類及び基準に関する条例一七条及び同条例施行規定六六条による。また、単労については帯広市単純な労務に従事する職員の給与の種類及び基準等に関する条例二条によつて準用される帯広市企業職員の給与の種類及び基準に関する条例一七条及び帯広市単純な労務に従事する職員の給与の種類及び基準等に関する条例施行規則二条によつて準用される帯広市職員給与条例施行規則二〇条である。

3同3及び4は、争う。

三  被告の主張

1  本件協定の効力について

本件協定は、次の各理由により被告に対して効力がないから、本件協定に基づき、それぞれ本件減額分相当の未払賃金請求権を有する旨の原告らの主張は理由がない。すなわち、

(一) 市職労の昭和五〇年四月当時の構成員をみると、組合員総数一、一七八名のうち、非現業の一般職に属する地方公務員(以下「一般職員」という。)六八九名、単労三九七名、企業職員九〇名、その他二名であつて、一般職員が過半数を占めていたうえ、組合の主要役員も大多数が一般職員で占められていた。したがつて、市職労は、地公労法にいう労働組合でなく、地公法五二条にいう職員団体である。そうすると、職員団体は、地方公共団体の当局と勤務条件に関して団体協約を締結する権利を有せず、協定を締結する権利しか有していない(地公法五五条二項)から、市職労が市長との間で締結した本件協定は、地公法上の協定にすぎず、地公労法上の労働協約としての効力はないものといわざるを得ない。もつとも、原告らは、本件協定は地公労法の適用を受ける原告らにとつては、労働協約としての効力を有する旨主張する。しかし、原告ら企業職員及び単労は、地公労法上独自に労働組合を組織し(同法五条、同法附則四項)、地方公共団体の当局と勤務条件について交渉し、労働協約を締結する権利がある(同法七条)のにこの方途をとらず、地公法上の職員団体である市職労に加入してその団結力による恩恵を享受する方途を選択したものである以上、本件協定が地公法上の協定であり、地公労法上の労働協約たりえないという本件協定の法的限界を当然に甘受せざるを得ないのである。したがつて、原告らの右主張は理由がない。

(二) 仮に右主張が理由がないとしても、本件協定が締結された昭和五〇年一二月一五日現在において、被告の各会計の既定予算中給与を規定する科目(以下「給与科目」という。)の金額の執行状況は別表(一)記載のとおりであつて、右表によると、右時点で、一般会計、簡易水道事業会計を除くその他の各会計については給与科目に不用額(年度末推計)を生じていたが、この不用額も、市長と市職労との間で昭和五〇年九月二五日締結された協定の内容である給与改定実施のための財源に充用されてしまつていたから、結局、被告が原告らに対し、右時点で本件差額分(これに相当する原告ら各自の金額を被告各会計別に合計した金額は、別表(二)記載のとおりである。)を支給することは、予算上実施不可能であつた。したがつて、本件協定は、本件差額分に関して地公労法一〇条一項にいう予算上不可能な資金の支出を内容とするものであり、その実施のための補正予算案が市議会によつて本件減額分だけ減額修正のうえ可決されたということは、議会における議決の性質上、取りも直さず本件協定中本件減額分についても市議会によつて不承認とされたことにほかならないから、本件協定中本件減額分については、同条三項により、その効力を発生するに由ないものといわなければならない。

2  本件各裁定の効力について

本件各裁定は、次の各理由により被告に対して効力がないから、本件各裁定に基づき、それぞれ本件減額分相当の未払賃金請求権を有する旨の原告らの主張も理由がない。すなわち、

(一) 市職労は、前記のとおり、地公法上の職員団体であり、地公労法にいう労働組合ではないから、地労委に対して仲裁申請をすることができず(地公法五八条一項)、地労委としては、右申請を不適法として却下すべきであつたのに本件各裁定をなしたものである。しかも、その内容自体、前記のとおり、労働協約としては無効な本件協定の実施を内容とするものである。したがつて、本件各裁定は、いずれの面からしても法律上当然無効である。

(二) 仮に右主張が理由がないとしても、本件各裁定が被告に交付された昭和五一年五月一〇日現在において、被告の各会計の既定予算中の給与科目の金額の執行状況は別表(三)記載のとおりであつて(右表のうちで病院事業会計及び水道事業会計の各欄は、いずれも「0」となつているが、その理由は、被告の各会計において、本件で問題となつている未払賃金を昭和五一年度予算で支払うことは、過年度に属する費用を現年度の予算で支払ういわゆる過年度支出となり、この場合、病院事業会計及び水道事業会計を除くその他の各会計においては、現年度予算中の該当科目から支出できるとされている(昭和三八・一二・一九自治庁行発第九三号)のに対し、病院事業会計及び水道事業会計においては、経営成績を明確にする意味から、別途「期間外費用」として科目を設けて予算に計上し、そこから支出しなければならないとされている(昭和二七・九・二九自治庁次長通達自乙発第二四五号、なお、昭和五一年一一月に右通達が改正された後は「特別損失」として予算に計上すべきものとされている。)ところ、本件各裁定交付時の段階ではそれが右各会計の予算中に計上されていなかつたからである。ちなみに、本件各裁定交付時における右各会計の昭和五一年度予算中給与科目の金額の執行状況は、右表該当各欄の括弧内の数額のとおりである。)、右表によると、右時点で右各会計の既定予算中には、本件各裁定が命じる本件減額分を原告らに支給するための経費が全くなかつたから、結局本件各裁定を実施することは予算上不可能であつた。したがつて、本件各裁定は、地公労法一六条一項ただし書にいう予算上不可能な資金の支出を内容とするものであり、しかも、市議会によつて不承認とされているから、右ただし書によつて準用される同法一〇条により、その効力が発生する余地はないものといわざるをえない。

四  被告の主張に対する認否

1被告の主張1については、(一)のうち、昭和五〇年四月当時の市職労の構成員の割合が概ね被告主張のとおりであつたことは認めるが、その余の主張は争う。(二)のうち、本件差額分に相当する原告ら各自の金額を被告の各会計別に合計した金額が別表(二)記載のとおりであることは認めるが、本件協定が本件差額分に関して地公労法一〇条一項にいう予算上不可能な資金の支出を内容とするものであり、本件協定中本件減額分についてその効力がない旨の主張は争う。

2同2については、(一)の主張及び(二)のうち、本件各裁定が地公労法一六条一項ただし書にいう予算上不可能な資金の支出を内容とするものであり、その効力がない旨の主張は争う。

五  原告らの反論

1  市職労の法的地位と本件協定及び本件各裁定との関係

(一) 市職労は、その労働関係について地公法の適用を受ける一般職員と地公労法の適用を受ける原告らとで組織されている団体であるが、いうまでもなく団結権の主体は労働者であり、労働団体は労働者の団結権行使の具現体であるから、団結権の法的保護の対象となるのも労働者が第一次的であり、労働団体は第二次的となるのである。したがつて、原告らの団結権の法的保護は、その加入する労働団体のいかんを問わず、あくまでも原告らが適用を受ける法律、すなわち、地公労法の規定するところによることとなる。ところで、昭和四〇年のILO八七号条約の批准に伴う一連の国内法改正によつて「職員でなければ職員の労働組合の組合員又は役員となることはできない。」と定める地公労法五条三項のいわゆる逆締め付け規定が削除された結果、同法の適用を受ける労働者は、その構成員の範囲を制限されることなく(ただし、使用者の利益代表者は除く。同法五条二項、労働組合法二条一号参照)、自由に労働組合を結成し、これに加入することが可能となつた。そして、右の労働組合は、地公労法の適用を受ける労働者にとつては、同法五条にいう労働組合であり、同法が規定する団結権の法的保護を受け、ただ、その所属構成員のうちに地公労法の適用を受けえない者を含む場合には、その者についてだけ地公労法の適用が排除されるにすぎないのである。したがつて、本件における市職労も、少なくとも地公労法の適用を受ける原告らに関する限り、同法五条にいう労働組合にほかならず、同法七条によつて労働協約締結権が、また、同法一五条によつて仲裁申請の資格が認められるから、市職労が市長との間で締結した本件協定、市職労の仲裁申請に対する本件各裁定は、原告らにとつて、それぞれ労働協約、仲裁裁定と認められるべきものである。

(二) また、仮に市職労が被告主張のように地公法上の職員団体であるとしても、右の結論に差異は生じない。すなわち、前述のとおり、ILO八七号条約の批准に伴う一連の国内法改正によつて、地公労法五条三項が削除されたほか同法附則四項が改正されたことによつて、同法の適用を受ける単労は、労働組合を結成することも、地公法上の職員団体を結成しあるいはこれに加入することも、いずれも可能となつたのであるが、これら団結権制限の解除は、同条約二条が「労働者及び使用者は、事前の認可を受けることなしに、自ら選択する団体を設立し、及びその団体の規約に従うことのみを条件としてこれに加入する権利をいかなる差別もなしに有する。」として労働者の自由に労働団体を選択する権利を規定していることに適合すべく行われたもので、改正法案(地公法及び地公労法)の下では、一つの地方公共団体の一般行政職員の組織する職員団体と企業職員、単労の組織する労働組合とが、交渉能力をもつ一つの連合体に結合することも、地方公共団体の単位をこえた単一の組織に結合することもでき、労働者には労働団体を自由に選択する権利及びその交渉代表として自由に団体を選択する権利とが保障されているのである。そうすると、原告らが加入している市職労が仮に地公法上の職員団体であるとしても、地公労法の適用を受ける原告らを代表する限りにおいて労働協約を締結することも、また、仲裁申請することもできるから、本件協定、本件各裁定は、原告らにとつてそれぞれ労働協約、仲裁裁定としての効力を有するものというべきである。

2  本件協定及び本件各裁定の実施可能性

(一) 地公労法一〇条は、予算上資金上不可能な資金の支出を内容とする労働協約と議会の予算審議権(地自法九六条一項二号)との調整を図るため規定されたものであり、同法一六条一項ただし書によつて、予算資金上不可能な資金の支出を内容とする仲裁裁定についても準用されているが、地公労法は、憲法二八条の労働基準権保障の規定を受けて、地公労法の適用を受ける職員の給与その他の労働条件を労使間の団体交渉を通じ労働協約によつて決定することとし(同法七条)、労使間において自主的に紛争を解決できない場合には、地公労法の適用を受ける職員に争議行為を全面的に禁止していることの代償措置として設けられた仲裁制度に基づく仲裁裁定が最終的決定として労使双方を拘束するとしている(同法一六条一項本文)から、地公労法一〇条の解釈適用に当たつては、労働協約、仲裁裁定を最大限に尊重しなければならない。したがつて、労働協約の実施可能性ないし効力については、次のように解釈すべきである(なお、次に述べることは、すべて仲裁裁定についても妥当する。)。すなわち、

(1) 給与の支給を内容とする労働協約が締結された場合において、その支給に必要な資金が、(イ)歳出予算の給与として定められている範囲に余裕があることによつて賄えるとき、(ロ)歳出予算の経費の流用によつて賄えるとき、(ハ)地公企法二四条三項により増加収入分を使用することによつて賄えるとき、(ニ)予備費を支出することによつて賄えるとき、(ホ)以上(イ)ないし(ニ)の方法を併用することによつて賄えるときなど、経理上の操作により既定予算の枠内で支出可能なときには(なお、地方公共団体の歳出は、すべて予算として作成されているから、既定予算の枠内で支出可能であれば、実際上、資金上も支出可能であるといえる。)、当該協約は予算上実施可能なものとして、直ちにその効力を生じ、地方公共団体は、当該協約の定めるところに従い給与を支払う義務を負担すると解すべきであるから、議会が当該協約についてかかわりをもつ余地は全くない。議会が労働協約についてかかわりをもつのは、当該協約が右(イ)ないし(ホ)の経理上の操作によつても既定予算の枠内では不可能な資金の支出を内容とする場合のみであつて、しかも、そのかかわりの程度は、予算上資金上の手当を認めるか否か、認めるとして必要な資金の全部か一部かということに限定され、当該協定の内容自体を変更したり否定したりすることは議会といえどもなしえないのである。したがつて、労働協約の内容のうち、既定予算の枠内で資金の支出が一部可能、一部不可能な場合には、当該協約は支出可能な部分についてとりあえず効力を生じるが、支出不可能な部分についても、後日予算上資金の支出が可能となつたとき(議会によつて追加予算が議決された場合、既定予算中給与に流用できる経費に不用額を生じた場合等)にその効力を生じるのであり、その実施のための追加予算案が議会によつて減額修正議決ないし否決されたからといつて、直ちに右部分が変更されたり無効となつたりするわけではない。

(2) 次に、既定予算の枠内で労働協約実施のための資金の支出が可能か否かについては、特に訴訟をもつて争われている場合には、事後的客観的に判断すべきであつて、協約締結当時の地方公共団体の長の主観や政治的配慮に基づいて判断されるべきではない。また、地方公共団体の長には、既定予算の枠内で労働協約実施のための資金を支出することが可能となるよう、許容されるあらゆる予算執行上の操作をなすべき義務があり、その操作もしないで議会に対して追加予算案を提出するというような裁量は認められない(地公労法八条ないし一〇条の規定の対比からも窺い知ることができるように、地公労法は、地方公共団体の長に対して労働協約を履行するために必要な措置をとることを義務づけており、労働協約を遵守しない方向でその権限を行使する裁量権を認めていない)。したがつて、事後的客観的にみると、地方公共団体の長が許容されるあらゆる予算執行上の操作をすれば既定予算の枠内で労働協約実施のための資金を支出することが可能であつたにもかかわらず、その操作をしないで議会に対し追加予算案を提出し、これが議会によつて減額修正議決ないし否決されたとしても、もともと客観的には当該協約について議会がかかわりをもつ必要は全くなかつたのであるから、議会の右議決は何の効力もないというべく、それ以前既に効力を生じていた当該協約の効力に影響を及ぼすものではない。

(二) 本件において右の考え方に従えば、本件協定(本件差額分)ないし本件各裁定は次のとおり予算上実施可能であつたから、その効力が生じていた。したがつて、原告らは、被告に対し、本件減額分に相当する未払賃金請求権を有する。すなわち、

(1) 本件協定が締結された昭和五〇年一二月一五日現在における被告の各会計の既定予算中給与を経費とする項の不用額(被告の各会計において、予算中の経費を「項」の内の「目」、「節」間で流用することについては法的制約がないから(地自法二二〇条二項、地公企法施行令一八条二項)、予算上給与に資金の支出が可能か否かは、給与を経費とする「項」の金額について判断される必要があることによる。ただし、病院事業及び水道事業の各会計においては、議会の議決を経ない限り職員給与費と他の経費との間で相互に流用することができないことになつているため(地公企法施行令一八条三項、予算様式一〇条)、予算上給与に資金の支出が可能か否かは、それぞれ給与を規定する「目」、「節」の金額について判断される必要がある。したがつて、以下右各会計については、それぞれ「目」、「節」の不用額とする。なお、この時点での不用額を、被告が主張するように支出済額と将来の支出見込額との合計額を予算現額から控除した差額と考えるのは、将来の支出見込額が不確実な推測値にすぎないから、適当とは言い難く、前述のとおり、予算上資金の支出が可能か否かは事後的客観的に判断すべきであるから、年度末の決算時における不用額をもつてそのままこの時点での不用額と解すべきである。)及び予備費の未充用額並びにその合計額は、別表(四)記載のとおりであるから、被告の各会計は、右時点において、予算上給与に右各合計額を支出することが可能であつた。したがつて、右各合計額と別表(二)記載の各金額(本件差額分に相当する原告ら各自の金額を被告の各合計別に合計した金額)とを対比すると、一般会計を除くその他の各会計の適用を受ける原告らに対しては、右時点において、補正予算案を提出するまでもなく、別表(四)記載の各合計額をもつて本件協定中の本件差額分を支給することが可能であつた。また、一般会計の適用を受ける原告らに対しては、右時点において、別表(四)記載の合計額の範囲で本件協定中の本件差額分を支給することが可能であり、右範囲を超える部分についても、市議会が本件協定実施のための補正予算を議決した昭和五〇年一二月二三日の時点において、右補正予算(このうち、原告ら支給分を被告の各会計別に合計した金額は別表(五)記載のとおりである。)をもつて支給することが可能であつた。

(2) 仮に年度の中途である本件協定締結時において、既定予算中の給与を経費とする「項」の不用額が把握できないとしても、別表(四)記載の不用額は、昭和五一年三月末の決算期において確実に把握しえたものである。そうすると、原告らに対しては、本件協定が締結された時点において、別表(四)記載の予備費の未充用額の範囲で本件協定中の本件差額分を支給することが可能であり、右範囲を超過する部分については、昭和五〇年一二月二三日の時点において、別表(五)記載の補正予算の金額の範囲で支給することが可能であり、それでもなお支給不可能な部分についても、おそくとも昭和五一年三月末の時点において、別表(四)記載の給与を経費とする「項」の不用額をもつて支給可能であつた。

(3) 仮に右(1)、(2)いずれの主張も理由がないとしても、本件各裁定書が被告に交付された昭和五一年五月一〇日現在における被告の各会計の既定予算中の給与を経費とする「項」の不用額(前述した見解のとおり、年度末決算時の不用額による。)及び予備費の未充用額は、それぞれ別表(六)記載のとおりである。したがつて右各金額と別紙請求金目録記載の被告の各会計別合計金額とを対比すると、右時点において、右給与を経費とする「項」の不用額によつても、また、右予備費の未充用額によつても、本件各裁定の実施が可能であつた。

(4) また、仮に右主張が理由がないとしても、おそくとも昭和五二年三月末の決算時において、右給与を経費とする「項」の不用額をもつて本件各裁定を実施することが可能であつた。

六  原告らの反論に対する認否

1原告らの反論1の主張は争う。

2同2については、(一)の主張は争う。(二)のうち、別表(四)ないし(六)記載の各金額と、被告の各会計において、予算中の経費を「項」の内の、「目」、「節」間で流用することに法的制約がないこと、ただし、病院事業及び水道事業会計において、職員給与費の流用について原告ら主張の制約があることは認めるが、その余の主張は争う。

七  被告の再反論

1原告ら主張のように、被告の各会計において、予算を各「目」の間又は各「節」の間で流用することは、法令上禁止又は制約されていないから、予算執行者だけの意思で行うことができる建前となつているが、これを無制限に行うことは予算本来の姿を混乱させ、みだりに予算の目的を変更する結果となるから、支出目的によつては流用を行うべきではなく、例えば需用費を人件費、交際費、食糧費に流用したりするように予算の目的に著しい変更を加えるような流用は厳にこれを避けるべきである。このことは、議会の予算議決の対象科目は「款」、「項」までであるが、この予算議決を経るため「目」、「節」の金額まで明らかにした予算説明が議会に提示されており、議会はその「目」、「節」の金額の積上げによるところの「款」、「項」の金額について最終的判断をしているのであるから、「目」、「節」について予算の目的に著しい変更を加えるような流用を行うことは、基本的に議会の予算議決を無視することになるということからも肯けるのである。したがつて、各自治体では、予算中の給与に他の経費を流用することはしておらず、流用の必要が生じたときは、予算の修正措置を講じることとしており、この流用制限は全国の自治体の会計実務上、いわば不文法として確立しているものである。

2予備費は、予算に計上されておらず予見できないものであつたが支出不可避の場合、あるいは予算に計上された経費ではあるがなお不足する場合などで、性質上軽微な費途に関するものに対して支出することを目的としている。したがつて、(一)流動的な執行を許すのが適当でない費途、(二)法令上支出してはならない費途、(三)法令上は支出できる費途であつても議会の否決した費途等に対しては予備費を充用することはできない。そうすると、原告ら主張のように、地公企法の財務規定上、職員給与費は流動的な執行を許すのが適当でないとして流用禁止費目とされ、職員給与費と他の経費とを相互に流用する場合は議会の議決を要するとされていること等を考慮すれば、給与への予備費の充用はできないと考えるべきであつて、このような観点から各自治体でも給与に予備費を充用することはせず、充用の必要が生じたときは予算の修正措置を講じることとしており、この取り扱いは全国の自治体の会計実務上いわば不文法として確立しているものである。

3仮に右1、2の流用ないし充用を認めるとすると、予算の執行状況いかんによつて原告らの間にも本件協定の利益を享受できる職員とできない職員が発生し、さらには一般職員と原告ら企業職員及び単労との間にも給与について不公平を生ずることになる。このようなことは、一般職員と企業職員及び単労とは同一地方公共団体の同じ職場に混在して勤務し、住民の税金から給与の支払を受けるものであるから、給与、勤務時間その他の勤務条件は同一水準によるべきものとする法律(地公労法附則四項、地公企法三八条三項)に違反し、行政の画一的執行という現実面からみても許されるべきことではない。

第三  証拠〈省略〉

理由

一請求原因一及び二の各事実(原告らに対する調整手当支給の根拠規定の点は除く。)は、いずれも当事者間に争いがない。

二  原告らは、被告に対し、本件協定の労働協約としての効力に基づき未払賃金請求権を有する旨主張するので、まずこの点につき判断する。

1市職労の昭和五〇年四月当時における組織構成が概ね被告主張のとおりであつたこと、すなわち、構成員総数が一、一七八名であつて、そのうち一般職員六八九名、単労三九七名、企業職員九〇名、その他二名であり、一般職員が過半数を占めていたうえ、主要役員も大多数が一般職員で占められていたことは当事者間に争いがない。そして、右の事実と本件の原告らの内訳は単労が四〇一名、企業職員が八七名であることを併せ考えれば、本件協定締結時当時から本件各裁定書の交付当時にかけての市職労(以下「市職労」という場合には、この当時における市職労を指す。)の組織構成も昭和五〇年四月当時とほぼ同様の状況にあつたことを推認することができる。

2右認定事実によれば、市職労は、一般職員と単労及び企業職員(以下「単労等」という。)が組織した単一組織の労働団体(以下「混合組合」という。)であり、このような団体の法的性格、その労働協約締結権の有無については、議論の存するところであるが、この点に関する当裁判所の見解は次に述べるとおりであり、当裁判所は、市職労は地公法上の職員団体であつて、労働協約締結権を有しないと解するものである。

(一)  地方公務員である一般職員は、地方公共団体の住民全体の奉仕者として、実質的には右住民に対して労務を提供する義務を負う特殊な地位を有し、かつ、その労務の内容も公務の遂行という公共的性質を有するものであることから、その労働関係については、地公法が適用され(同法四条一項)、民間労働者のように労働組合法(以下「労組法」という。)、労働関係調整法(以下「労調法」という。)の適用がない(地公法五八条一項)。その結果、一般職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、最終的には地方公共団体の議会の制定する条例によつて定めることとされ(地公法二四条六項)、一般職員が右の勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体の法的性格も、労組法上の労働組合ではなく、職員団体という特殊な団体とされ(地公法五二条)、右職員団体は、一般職員の勤務条件について地方公共団体の当局と交渉し、書面による協定を結ぶことができるが、右交渉権には規範的効力を有する団体協約を締結する権利を含まないものとされている(地公法五五条)。そして、その代償として、一般職員には勤務条件に関する措置要求権が認められている(地公法四六条ないし四八条)。このように、一般職員には、労働組合を組織し、団体交渉とその結果である労働協約によつて労働条件を決定する方式が採用されていないのである。

他方、単労等は、一般職員と同じ一般職に属する地方公務員(地公法三条)であるけれども、民間の類似職種の労働者と職務内容が実質的に共通しているので、公務員として欠くことのできない規制は別として、できる限り民間労働者と同じような取扱いをする趣旨から、その労働関係については、地公法の特例を定める地公労法のほか、労組法、労調法が適用されている(地公労法四条)。その結果、単労等は、争議行為は禁止されているものの(地公労法一一条)、労組法上の労働組合を組織することができ(地公労法五条一項)、右労働組合は、単労等の労働条件に関して団体交渉を行い、労働協約を締結することができるとされている(地公労法七条)。そして、争議行為禁止の代償措置として、仲裁の制度が設けられているのである(地公労法一五条)。ただ、単労については、特に小規模な地方公共団体においては、一般職員とともに勤務し、一般職員が組織する職員団体に加入している例が多いという実情に鑑み、企業職員とは異なつて、地公労法附則四項より地公企法三九条一項が準用される結果、地公法五二条から五六条までの規定が適用され、地公法上の職員団体を組織することも認められている(この場合、単労は、一般職員と同じ地公法上の職員として取り扱われることになる。)。

右に見たとおり、我国の現行法制度の下においては、一般職員と単労等は、ともに一般職に属する地方公務員ではあるが、その職務と責任の特殊性に応じて、それぞれの労働関係を規律する法を異にし、一般職員の組織する職員団体と単労等の組織する労働組合とは、その法的性格及び権能に重大な差異が設けられているのである。したがつて、地方公務員の組織する労働団体が職員団体であるか労働組合であるかは、その労働関係を規律していく上で極めて重要であつて、これが明確にされなければ法の適用に混乱を来す虞れがあるといわなければならない。そこで、その法的性格が必ずしも判然としない混合組合については、その労働関係への法の適用を考えるに当たつて、まず右団体が職員団体であるか労働組合であるかを検討することが必要不可欠となつてくる。

ところで、労組法上、労働組合とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体をいい(同法二条)、労働者が主体となつていることが労働組合であるための要件とされ、また、地公法上、職員団体とは、一般職員がその勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体をいい(同法五二条一項)、一般職員の利益を図るための団体である以上、やはり一般職員が主体となつていることが職員団体であるための要件と解される。そうすると、混合組合の法的性格はその実態に即してこれを決するのが相当であるというべきであるから、労組法上の労働者である単労等が当該混合組合の主体となつている場合には、労働組合であり、地公法上の職員である一般職員が当該混合組合の主体となつている場合には、職員団体であると解すべきである。これを市職労についてみると、前記1に認定のとおり、市職労において一般職員が質量ともに主体をなしていたことは明らかであるから、市職労の法的性格は、地公法上の職員団体であるといわなければならない(証人尾畑安治の証言によると、現に市職労は、本件協定締結当時、地公法五三条に基づき職員団体としての登録を受けていたことが窺われる。)してみると、市職労と被告との間の労働関係については、職員団体に関する法が適用されることは明らかである。

(二) 次に問題となるのは、右のように本来職員団体と考えるべき混合組合の労働関係について、重畳的に地公労法等を適用することができるか、という点である。原告らは、団結権の法的保護の対象は第一次的には労働者であるから、加入する労働団体のいかんを問わず、原告らについては地公労法の適用があり、市職労は原告ら単労等に関する限り労働組合にほかならないと主張し、また、市職労が職員団体であつても、原告らを代表する限りにおいて労働協約を締結することができると主張するが、これらの主張は、いずれも市職労と被告との間の労働関係について、重畳的に地公労法を適用すべきであるとするもの、換言すれば、市職労は職員団体であると同時に、原告ら単労等が加入している限り労働組合でもあるという二面的性格を有する労働団体であるとするものといえる。この点について、職員団体も労働組合も、等しくその構成員の勤務条件ないし労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを目的とする団体であつて、相互に矛盾するものではないから、構成員に一般職員と単労等を含む限り右の二面的性格を認めるべきであるとする考え方もありうるところである。しかしながら、右のような理由だけから、職員団体でもあり、労働組合でもあるという労働団体の存在を肯認するのは、あまりにも便宜的であつて、現行法の本来予想しないところであるといわざるを得ない。けだし、前述のとおり、地方公務員の団結権の保障に関する現行法制度は、公務員の職務と責任の特殊性に応じて二つの労働団体を截然と区別し、それぞれの団体の性格に適した法をもつてその労働関係を規律していこうとするものであるから、公務員がいずれの労働団体に加入しようとも、その団体の性格を無視して各公務員の法的地位に応じて法を区々に適用することは、現行の法体系の混乱を招き、許容されていないと解される。のみならず、仮に右のような二面的性格の労働団体の存在を認め、法を区々に適用していこうとすると、その団体の行為が労働組合としてのものか職員団体としてのものか疑義を生ずるなど、現実の労働関係に紛議を生ぜしめる虞れなしとしないからである。したがつて、憲法の保障する団結権の保護に欠けるというのではない限り、右のような二面的性格を有する労働団体の存在を肯定すべきではないと解すべきところ、前述のように二つの労働団体を峻別する現行法制度は、一般職員及び単労等が自らの法的地位を考慮して自主的に団結権を行使することを認め、それぞれの地位にふさわしい労働団体を組織し、これに加入することを期待しているものというべきであつて、前述の現行法制度の内容に照らしてみると、右団結権の行使の方法いかんによつてその効果に相違が生ずるとしても、右のような二面的性格の団体を認めないと団結権の保護に欠けるとまで断ずることはできない。

そうだとすれば、市職労のような混合組合について、労働組合としての性格を認め、地公労法を適用することは許されないといわざるを得ないから、市職労は、労働協約締結権を有しないというべきであり、原告らの右主張は、結局いずれも採用できない。

なお、右のように市職労に労働協約締結権がないとすると、原告らの保護に欠け、妥当でないとの反論が考えられないではないが、原告ら単労等には地公労法上独自に労働組合を組織して労働協約を締結する権利が認められているのに、この方法によらずに一般職員が主体となつて組織する団体に加入して、その団結力の恩恵を享受する方途を選択したものである以上、右団体が地公法上の職員団体として取り扱われ、原告らについて労働協約締結権が認められないとしても止むを得ないものというべきである。

3以上の次第であつて、市職労が地公法上の職員団体であつて労働協約締結権を有しない以上、被告との間で締結した本件協定は、地公法上の書面協定(同法五五条九項)にすぎず、労働協約としての規範的効力はない。したがつて、原告らの本件協定の労働協約としての効力に基づき未払賃金請求権を有する旨の主張は失当である。

三次に、原告らは、被告に対し、本件各裁定の仲裁裁定としての効力に基づき未払賃金請求権を有する旨主張する。

しかし、市職労は、前記二のとおり、地公法上の職員団体として取り扱うほかないから、地公労法一五条に基づいて、原告ら単労等につき、労働委員会に対し、仲裁を申請する資格はないものといわなければならない。

もつとも、このように解すると、一般職員が主体となつて組織された混合組合に加入した単労等は、勤務条件に関する措置要求制度の適用が除外されている(地公企法三九条一項、地公労法附則四項)うえに、地公労法上の仲裁制度による救済も受けられないため、結局のところ、その勤務条件に関して何らの救済も受けられなくなり、保護に欠けるかのようである。しかし、前記二のとおり、単労等には、労働組合を組織して労働協約を締結する権利が認められており、それによつて勤務条件の保障が可能となるからこそ、地公法上の勤務条件の措置要求制度が適用されないことになつているのであるから、前述のように単労等が独自に労働組合を組織することをせずに、一般職員が主体となつて組織する団体に加入して、その団結力の恩恵を享受する方途を選択した以上、このような事態もまた止むを得ないものといわなければならない。したがつて、右のような結果が単労等に生ずることをもつて、一般職員が主体となつて組織する混合組合を単労等に関する限り労働組合として取り扱い、仲裁の申請資格を認めることはできない。

右に述べたとおり、市職労には原告ら単労等のため労働委員会に対し仲裁を申請する資格が認められない以上、市職労の仲裁申請を容れてなされた行政処分としての性格を有する地労委の本件各裁定は、地労委が申請資格の認定を誤り、延いては自己の権限に属しない事項についてなした処分であつた点において重大な違法があるといわざるを得ず、かかる裁定の内容の履行を被告に甘受させることは著しく不当というべきであるから、本件各裁定は当然無効と解するのが相当である。したがつて、原告らの本件各裁定の仲裁裁定としての効力に基づき未払賃金請求権を有する旨の主張も失当である。

四以上述べたとおり、本件協定及び本件各裁定は、それぞれ労働協約ないし仲裁裁定としての効力を有しないものと解するほかないが、本件訴訟の経過に鑑み、それらが原告らに関する限りそれぞれ労働協約、仲裁裁定としての効力を有すると仮定して、本件協定中の本件差額分及び本件各裁定の予算上又は資金上の実施可能性の点から、その効力について検討を加えることとする。

1本件協定の内容は、被告が市職労の組合員に対し、昭和五〇年度の年末手当として組合員一人当たり給与月額の3.05か月プラス一七、五〇〇円を支給すべきことを内容とするものであること、市長は同年一二月一八日、同年一二月支給の期末手当として規定されている職員一人当たり給与月額の2.7か月分と本件協定との差額である給与月額の0.35か月プラス一七、五〇〇円を調整手当として支給するため市議会に対し補正予算案を提出したこと、しかし、右補正予算案の付議を受けた市議会予算特別委員会は、同月二三日、審議の結果原案を職員一人当たり給与月額の0.075か月プラス二、五〇〇円分減額する修正案を議決し、右同日、市議会本会議も減額修正案を承認議決したこと、以上の事実は前記一のとおり当事者間に争いがなく、本件差額分に相当する原告ら各自の金額を被告の各会計別に合計した金額が別表(二)記載のとおりであることも当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない甲第三ないし第五号証、証人塚本帝雄の証言、被告代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、被告の各会計の予算上原告らに支給されるべき給与関係経費は、一般会計、下水道会計、競馬会計、食肉センター会計においてはいずれも職員給与関係費として「項」に、簡易水道事業会計においては職員給与関係費として「目」に、病院事業会計においては給与費として「目」に、水道事業会計においては給料、手当等、法定福利費、退職給与金として「節」にそれぞれ計上されていること、市では例年、会計年度開始前の予算案策定の段階で、職員の年末手当について職員数、平均給与、条例の数値等を基準に必要経費を算定し、これを被告の各会計の予算に計上しているところ、昭和五〇年度予算においては、職員数につき増員分を考慮のうえ支給時の人員を査定し、平均給与については一率五パーセントのベースアツプを見込んだ額を査定し、一人当たりその2.7か月分を被告の各会計に計上したが、右を超える一人当たり0.35か月プラス一七、五〇〇円分(本件差額分)を当初予算に計上しなかつたこと、本件協定締結時現在、被告の各会計における昭和五〇年度予算中の給与科目の予算執行状況が別表(一)記載のとおりであつたこと、右時点で会計年度末に一般会計、簡易水道事業会計の給与科目については予算の不足が見込まれたが、その他の会計の給与科目については不用額を生じる見込みであつたこと、しかし、右不用額は、いずれも市長と市職労との間で昭和五〇年九月二五日締結された給与改定を内容とする協定実施のための財源に充用されてしまつていたこと、以上の各事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

右事実によれば、本件協定中の本件差額分を支出するに必要な経費は、被告の各会計の既定予算に計上されていなかつたもので、しかも、本件協定の締結時において、被告の各会計の給与科目に本件差額分の支出に充てうる見込不用額がなかつたものである。そして、被告の各会計において、予算中の経費を各「項」の間で流用することは予算の定めがない限りできず(地自法二二〇条二項、地公企法施行令一八条二項)、また、水道事業会計及び病院事業会計においては、議会の議決を経ない限り職員給与費と他の経費との間で相互に流用することができないこととされている(地公企法施行令一八条三項、同法施行規則一二条、別表第五号予算様式一〇条)ところ、弁論の全趣旨によれば、本件協定の実施に関し、右経費の流用を認める予算の定め又は議会の議決はなかつたと認められるので、簡易水道事業会計を除く被告の各会計において予算執行者による経費の流用の余地はなく、さらに、簡易水道事業会計において本件協定の実施のため他の経費を流用すること、被告の各会計において予備費を本件協定の実施のため充用することのいずれについても、予算執行者がこれを決定した旨の主張立証はなく、かえつて証人塚本帝雄、同桜井正の各証言、被告代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、そのような決定をしなかつたことが認められる。そうすると、本件協定締結時において、同協定中の本件差額分については、これを実施するために必要な経費が予算上不足していたものであり、本件協定中の本件差額分は、予算上実施不可能な資金の支出を内容とするものであつたといわざるを得ない。

原告らは、予算執行者において許容されるあらゆる予算執行上の操作をすれば、必要な資金の支出が可能であつたと事後的、客観的に判断されるときは、予算上実施可能であつたとすべきであり、本件協定締結時において本件差額分の実施は予算上可能であつたと主張する。そしてまず、被告の各会計の給与科目(簡易水道事業会計にあつては流用を前提として給与科目を含む「項」の勘定科目)における不用額は、見込額によらず、年度末に実際に生じた額をもつて本件協定締結時における不用額とみるべきであると主張するが、予算科目の不用額の存否を事後的客観的に判断すべきものとするのは、成立時において予算上資金上不可能な支出を内容とする協定は、議会の開会中であれば締結後一〇日以内に議会に、閉会中であれば次の議会にすみやかに、これを付議して承認を求めるべきものとする地公労法一〇条の規定からみて、法の予定するところではないばかりでなく、事後の予算の執行いかんで協定の効力が左右されるのは不当であるから、あくまで協定締結時において、その時の見込額を基準として可能か否かを判断すべきであると解されるから、右主張は採用の限りでない(なお、被告の各会計の右給与科目の昭和五〇年度末の不用額が別表(四)記載のとおりであることは当事者間に争いがないが、このことのみをもつて、被告の不用額の見込額に誤りがあつたとすることはできない。)。次に、原告らは、経費の流用及び予備費の充用という予算執行上の操作により本件差額分を予算上賄うことができた旨主張する。しかしながら、経費の流用(本件では簡易水道事業会計においてのみ可能であつたことは、前記のとおりである。)及び予備費の充用は、一般的には予算執行者が予算の運営全般にわたる高度な経済的、政策的見地から、その権限と責任においてなす裁量行為であり、右裁量権の行使については、議会が予算執行者の責任を追及することにより、民主的コントロールの下に置いているのであるが、この裁量権は、労働協約の実施に関する場合であつても、予算執行者に留保されているものと解するのが相当である。けだし、地公労法一〇条は、労使間の自主的団体交渉の結果である協定をできる限り尊重する立場をとりつつ、財政民主主義の要請との調和を図る趣旨から、予算上又は資金上経費に不足を生ずる協定についてその実施を地方公共団体の議会の意思に委ねることとしたもので、その限りにおいて議会の予算審議権を重要視していること、予算執行者が流用又は充用を行わないため協定が予算上実施不可能な場合には、地方公共団体の長はこれを議会に付議する義務を負い、協定の実施の可否は議会の決するところとなるのであるから、予算執行者に裁量権を認めても、その恣意により協定の実施が左右されるものではないこと、他方、予算執行者が流用又は充用を行つた場合、これが裁量権の行使によるものとすれば、前述のとおり議会による責任追及が可能であるが、この流用又は充用につき議会の審議権が及ぶことを認めたとしても、右地公労法一〇条の趣旨に反するとは考えられないこと、かえつて、協定が成立した場合には予算執行者においてその経費を支出するため可能なあらゆる予算執行行上の操作をすべき法律上の義務を負うとすると、予算執行面で変更があるにも拘らず、議会が予算執行者の責任を問うことが法的にも政治的にもできないことになり、右規定の趣旨を没却することになりかねないこと、以上の事情を総合勘案してみると、労働協約の実施という他の一般行政上の必要に基づく流用又は充用とは異なる事情による流用又は充用であつても、なお、予算執行者の右裁量権を否定すべきではないと考えられるからである。したがつて、仮に流用の可能な予算科目又は予備費に未執行額があつても、予算執行者において現実に流用又は充用を決定しない限り、協定の予算上の実施可能性に影響をするものではないといわなければならない。本件においては、協定の一方当事者でこれを遵守すべき市長が、予算執行者でもある(ただし、水道事業会計は除く。)という関係にあるが、市長の予算執行者としての右裁量権は、前述のような理由で裁量権を認める以上、このような関係にあつてもなお失われないと解するのが相当である(ちなみに、地方公営企業においては、前記のとおり職員給与費が流用禁止科目とされ、他の経費との流用には議会の議決を要するとされており、また、証人塚本帝雄の証言によれば、被告においても予備費の性格を考え、これを職員給与費に流用しない慣行があることが認められる。)から、原告らの右主張も採用できない。そうすると、本件協定締結時において本件差額分の実施が予算上可能であつたとする原告らの主張は理由がなく、これが不可能であつたとする前記判断を履すに足りない。

そして、本件協定に基づく補正予算案は、前記のとおり市議会において減額修正されて議決されたもので、成立に争いのない乙第七、第八号証、証人尾畑安治、同片山唯雄の各証言、被告代表者本人尋問の結果によれば、本件協定自体は市議会に付議されていないが、右補正予算案審議の過程で本件協定の内容についての審議がなされ、本件差額分全額の支給が不適当であるとの趣旨で右減額修正されたものと認められるから、本件協定が混合組合の締結したものであるという本件の特殊性を考慮すれば、協定自体が付議されていなくとも本件協定中の本件減額分については、市議会において不承認とされたものと解するのが相当である。そして、議会の承認は協定の効力要件と解すべきである(議決を履行条件と解するのは、協定の効力が浮動的となるから妥当でない。)から、本件協定中の本件差額分は、地公労法一〇条によりその効力を発生するに由ないものといわなければならない。

なお、原告らは、本件協定中の本件減額分の効力が右議決後も存続することを前提として、昭和五一年三月末において本件減額分が予算上実施可能であつた旨主張するが、右主張の理由がないことは既に述べたところから明らかである。

2次に、本件各裁定の予算上の実施可能性について検討すると、本件各裁定は、被告が市職労に所属する原告らに対し、本件減額分(その金額は別紙請求金目録記載のとおりである。)を支給すべきことを内容とするものであることは、前記一のとおり当事者間に争いがない。また成立に争いのない甲第一五、第一六号証、証人塚本帝雄の証言及び弁論の全趣旨によれば、被告の各会計の昭和五一年度予算案策定に当たり、昭和五〇年一二月分手当としての本件減額分は考慮されていなかつたこと、本件各裁定書の交付時において、被告の各会計における昭和五一年度予算中の給与科目の予算執行状況が別表(三)記載のとおりであり(ただし、病院事業会計及び水道事業会計については括弧内の金額)、右時点で会計年度末にいずれの会計の給与科目にも不用額を生じる見込みがなかつたことを認めることができる。そうすると、被告主張の点、すなわち、本件各裁定が支給を命じる本件減額分を被告の各会計の昭和五一年度予算で支出することが過年度支出となり、病院事業会計及び水道事業会計について別途科目を予算に計上しなければその支出ができないか否かの点は一応措くとして、仮にすべての会計についてこれを昭和五一年度予算中の給与科目から支出するにしても、本件各裁定書の交付時において右給与科目自体にその余裕がなかつたものといわなければならない。そして、本件差額分についてと同様、被告の各会計の予算執行者が、本件各裁定実施のための経費(本件減額分)の支出のため、他の経費の流用又は予備費の充用を決定した旨の主張立証はなく、かえつて右決定がなかつたことが証人塚本帝雄の証言、被告代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨により認められるから、本件各裁定は、裁定書の交付時において、予算上実施不可能な資金の支出を内容とするものであつたというべきである。

原告らは、本件各裁定が予算上実施可能であつたとして、本件協定中の本件差額分に関する主張と同様の主張をするが、これが理由がないことは既に述べたところから明らかである。すなわち、裁定の場合であつても、その予算上の実施可能性は裁定書の交付時における見込額で判断すべきであり、また、経費の流用又は予備費の充用については、裁定の実施であつても、協定の実施についてと同様の理由から、なお予算執行者の裁量によるものと解すべきである。

右によれば、本件各裁定は、予算上実施不可能であつたものであるところ、本件各裁定の承認を求める議案及び補正予算案が市議会で否決されたことは前記一のとおりであるから、本件各裁定は、地公労法一六条一項ただし書、同法一〇条によりその効力が発生する余地はないといわざるを得ない(なお、原告らの本件各裁定の効力が右議決後も存続することを前提とする主張は、前述のとおり議会の承認を効力要件であると解すべきであるから、採用できない。)。

五以上の次第であつて、いずれにしても本件協定及び本件各裁定はその効力がないから、これが有効であることを前提とする原告らの本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないので、いずれもこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(相良朋紀 小磯武男 水谷博之)

請求金目録

番号  原告氏名  請求金額

1 芳賀勝男 一七、二五二円

〈2〜86中略〉

87 三浦偵郎 一一、〇二〇円

(以上、水道事業会計適用合計

一、〇七三、九〇五円)

88 大島武雄 一六、五二二円

〈89〜453中略〉

454 高橋好風 一六、六九七円

(以上、一般会計適用合計

四、六八七、四一二円)

455 伊藤時男 一三、九七五円

〈456〜466中略〉

467 高橋宏光 八、七九二円

(以上、下水道会計適用合計

一六八、七一九円)

468 林八十吉 一五、四三〇円

〈469〜480中略〉

481 砂土居隆光 八、七九二円

(以上、食肉センター会計適用合計

一七七、四一五円)

482 渡邊亮 一五、七八二円

(以上、競馬会計適用

一五、七八二円)

483 和泉譲 一三、六二二円

(以上、簡易水道会計適用

一三、六二二円)

484 佐藤善次 一四、六八〇円

〈485〜487中略〉

488 柳舘利枝 一一、〇八〇円

(以上、病院事業会計適用合計

六七、一一五円)

仲裁裁定目録

申請人全日本自治団体労働組合(以下「自治労」という。)帯広市職員労働組合と、

1 被申請人帯広市との間の昭和五一年四月三日付申請にかかる帯広市争議仲裁事件につき、

(1) 昭和五〇年一二月手当について労使が昭和五〇年一二月一五日付協定書により協定した金額と既に支給した金額との差額を使は速かに地方公営企業労働関係法附則四項に規定する職員のうち自治労帯広市職員労働組合に所属する組合員に対して支給すること。

(2) 本裁定書の効力の発生は当事者に交付された日とする。

2 被申請人帯広市水道部との間の昭和五一年四月三日付申請にかかる帯広市水道部争議仲裁事件につき、

(1) 昭和五〇年一二月手当について労使が昭和五〇年一二月一五日付協定書により協定した金額と既に使が支給した金額との差額を使は速かに水道部に勤務する職員のうち自治労帯広市職員労働組合に所属する組合員に対して支給すること。

(2) 本裁定書の効力の発生は当事者に交付された日とする。

3 被申請人帯広市教育委員会との間の昭和五一年四月三日付申請にかかる帯広市教育委員会争議仲裁事件につき、

(1) 昭和五〇年一二月手当について労使が昭和五〇年一二月一五日付協定書により協定した金額と既に使が支給した金額との差額を使は速かに地方公営企業労働関係法附則四項に規定する職員のうち自治労帯広市職員労働組合に所属する組合員に対して支給すること。

(2) 本裁定書の効力の発生は当事者に交付された日とする。

昭和50年12月15日現在

別表(一)

(単位:1,000円)

会計区分

給与科目

予算現額

支出済額

今後支出

見込額

不用額

(年度末推計)

A

B

C

A-(B+C)

一般

項:職員給与関係費

4,012,222

2,923,440

1,315,272

△226,490

下水道

〃:    〃

157,543

115,218

41,725

600

競馬

〃:    〃

32,547

21,884

8,016

2,647

食肉センター

〃:    〃

50,668

36,309

14,241

118

簡易水道事業

目:職員給与費

2,895

2,141

801

△ 47

病院事業

〃:給与費

93,662

58,831

30,232

4,599

水道事業

節:給料等

267,814

190,503

74,788

2,523

別表(二)

(単位:1,000円)

会計区分

本件差額分

一般

24,015

下水道

837

競馬

81

食肉センター

908

簡易水道事業

70

病院事業

347

水道事業

5,520

昭和51年5月10日現在

別表(三)

(単位:1,000円)

会計区分

給与科目

予算現額

支出済額

今後支出

見込額

不用額

(年度末推計)

A

B

C

A-(B+C)

一般

項:職員給与関係費

4,626,526

286,667

4,339,859

0

下水道

〃:    〃

194,427

9,773

184,654

0

競馬

〃:    〃

36,957

1,888

35,069

0

食肉センター

〃:    〃

58,440

3,006

55,434

0

簡易水道事業

目:職員給与費

3,705

182

3,523

0

病院事業

〃:給与費

0

(139,005)

0

(5,479)

0

(133,526)

0

水道事業

節:給料等

0

(333,097)

0

(15,428)

0

(317.669)

0

別表(四)

(単位:1,000円)

会計区分

勘定科目

不用額

予備費の

未充用額

合計額

一般

項:職員給与関係費

4,612

9,075

13,687

下水道

〃:    〃

1,075

500

1,575

競馬

〃:    〃

23

1,000

1,023

食肉センター

〃:    〃

2,026

300

2,326

簡易水道事業

〃:大正簡易水道経営費

316

50

366

病院事業

目:給与費

4,984

300

5,284

水道事業

節:給料、手当等

8,097

721

8,818

別表(五)

(単位:1,000円)

会計区分

補正予算額

一般

19,319

下水道

674

競馬

65

食肉センター

731

簡易水道事業

56

病院事業

279

水道事業

4,446

別表(六)

(単位:1,000円)

会計区分

勘定科目

不用額

予備費の

未充用額

一般

項:職員給与関係費

53,447

14,270

下水道

〃:    〃

1,171

450

競馬

〃:    〃

19

1,000

食肉センター

〃:    〃

226

300

簡易水道事業

〃:大正簡易水道経営費

143

50

病院事業

目:給与費

7,276

300

水道事業

節:給料、手当等

1,930

2,800

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